広島ドッグレスキュー。。。 私感

 今、マスコミでも取り上げられている、広島のドッグレスキュー。
救出に立ち上がった団体のHPはずっと以前から見ていたし、ささやかながら、支援物資を送ったこともある。
事務所に訪ねたこともなく、お会いしたこともない方たちを、応援したいなどと言うのは、ある意味無責任なのかもしれないけれど、HPを拝見する限り、戦うべき所では戦い、助けられる限り、一頭でも多くの犬たちを、管理センターや、劣悪な環境から引き出すため、日々奔走されているのが、ネットを通してでも、私には十分に伝わってくるので、小さな事でも自分にできることはないかと、折に触れ、HPで、自分なりの思いを書いたり、友人、知人などの会話の合間に話したりしてきた。自分ではなにもできないと思っていても、何か自分にでもできることはないかと、考えてもらえる人の輪が広がって欲しい、そんな気持ちからだ。

 そんな中、今回の広島の事件が、ニュースなどで、大々的に取り上げられた。
あまりに衝撃的な犬たちの姿は、今の社会の弱者虐待の根っこと言うか、縮図のように見えたのは、私だけではないと思う。
今までに無いくらい、世間の関心を集め、先日譲渡会も行われ、沢山の方たちが、残された犬たちの幸せを願って、ボランティアとして、あるいは、里親に手を上げるため、広島に集まったようだった。

 そんな善意の人達の中に一組の心優しい、犬を愛してやまないご夫婦が居た。
片道数時間をかけて、犬たちに会いに行き、一頭の子と共に帰ることができた。
 その日から、ご夫婦にも、やってきた子にも穏やかな時間が始まり、沢山の友人も心から喜んでいた。
このご夫婦の周囲には、「犬バカ」と、言われることを少しもいとわない、本当に犬を愛している方が多いので、皆、自分が新しい家族を迎えるような気持ちだったのかもしれない。

 ところが、数日後、その子は広島に帰る事になった。勿論、飼い主さんの意思ではない。
いきさつの詳細は、私が直接ご本人に伺ったわけでもなく、事の真意を確かめることも、現状では無理なので、公のネットと言う場で書くのは控えざるをえないけれど、その方と親しい方のお話を伺うかぎり、手続きの上で、団体、現地スタッフ(ボランティアさんかもしれません)、里親さん、それぞれの間で、行き違いのような事がおき、誤解が生じたようで、とはいえ、それは皆、犬を大切に考えていればこその善意以外の何者でもなく、それぞれが、良かれと思っての事にもかかわらず、残念な結果になった、と、私は理解している。
 ただ、そこには、それぞれの立場での思いも存在するだろうし、物の言い方、話の順序、それぞれに、感じ方、理不尽に思える話、ことに里親さんには、当事者でなければわからない思いも多々あったのではないかと、友人の話をかいしてでも察する事ができた。

 私も、友人を通しての知り合いではあるけれど、お顔を存じている方ではあるし、身近な方からお噂なども良くお聞きするので、そのお話を伺った時は、正直「なぜ?」と、思うと同時に、家にもなじんで、その子と、里親さんの幸せそうな様子を聞いた矢先のことでもあって、送り返された子の気持ち、里親さんのお気持ちを考えると、なんともやりきれない、残念な思いで一杯になった。

 一般的な関心も高いのか、ネットでも、広島のレスキューの話題を良く見かける。
彼方此方のHP、bbsなどの書き込みをみると、沢山の方が心を痛め、レスキュー団体や、ボランティアの皆さんのHPを見て、涙されているのが伝わってくる。
 そんな中、一つのbbsを見つけた、そのbbsは、第三者によって設置されたと思われるbbsで、団体は、そのbbsには関与してないように見受けられた。
皆さんまじめに書き込みをされているようだったが、当事者不在なので、書かれてあることの大半は、疑問と憶測。
社会問題を皆で論じて、問題意識を持つことは大切なことだとは思う、けれど、事実関係を確認できない場所で、当事者不在のまま、特定の問題を、匿名で論じるのは、正直怖いと、私は思う。
事が深刻な場合、個々の書き込みによって、ミスリードが起こったり、誤解を招いたり、誰かに迷惑、をかけるような事態になった際、責任の取れない怖さ。
だから、そういう場所では一切書き込みは控えているので、恐らくは↑に書いた事と思われる内容についても、様々な書き込みがあったけれど、今回も読むだけにとどめて置いた。

 TVを始め、マスコミでも、折に触れ、取り上げているのを見かける。そこでは、様々な、思いや、考えが、映し出される。
譲渡会での様子の中には、里親を申し出た方たちの困惑や落胆などもあったと聞く。
そんなお話の中で、或いは、友達との会話のなかで、良く話題に上るのが、「避妊・去勢」についてで、この事は私自身、その団体と考え方は違う。
引き取った子は勿論、先住犬にまで、「避妊・去勢」と言われれば、残念だけれど、私は里親にはなれない。
 繁殖を考えていない場合でも、今まで、沢山本を読み、様々な立場の方のお話を伺ったけれど、私にはお友達のかかりつけの獣医さんがおっしゃった「あなたは、或いは、あなたのお子さんを、将来病気になるかも知れないからと、手術をしますか?」の、言葉以上に、納得のいく言葉が未だにみつからず、ケースバイケース、個体差や飼い主さん個々の考えなどあるとおもわれるので、飼い主さんの良識、管理責任に対する意識レベルによっては自己責任の領域のような気がするので、この部分については、考えは明らかに違う。

 ただ、私の考え、これは個人だから言えることで、団体として、レスキューをしておられる方々は、悪徳ブリーダーの乱繁殖、無責任な飼い主の放棄などで、日々、悲しい目にあう子達を目の当たりにし、なんとかそれを減らすため、或いは、里親を騙って純血種を引き出しにくると言う、どうしようもないブリーダーからその子達を守る為、恐らくは、私には考えもつかないような現場の状況などもあって、団体として、そう明記しているのだろうと言うことは充分理解はできる。

 人それぞれ、考え方も違えば、感じ方も色々、同じ方向を向いて走っていても、人が増えれば増えるほど、組織が大きくなればなるほど、それを持続させるのは大変な事で、時には、傍からは、冷淡に感じられるような一貫性を持たなければ、組織としては機能しなくなることもあると思う。
ところが、そういう事から、誤解が生じたり、トラブルに発展したりと、思わぬ事になったりする。
今回の譲渡会で、不愉快な思いをされたり、納得のいかない出来事に遭遇した方達のお話や書き込みを目にすると、皆で、時間をかけて話し合えば、解決、或いは、理解しあえたのではないか。。。と、残念だ。

ただ。。。恐らく現場にいる方達は、日々、自分のお仕事+犬達の世話、書類の整理、手続き、など、一杯一杯の毎日を過ごされているのではないだろうか。。。
譲渡会当日だけでも、二日間で、数千人の人が押し寄せ、数百当の犬を管理、面接し、数百人のボランティアさん達も加わっての今までにない大規模なレスキュー、恐らく今は、事後処理に追われているだろう。。。
 どこかのbbsで、「保護活動をしていれば、何をしてもゆるされるのか」と言うような、書き込みも見た。
その団体が悪意のもと、何かをしたのだろうか。。。
今のところ、そう思える事例を私は知らない。
確かに、私の知人に起こった出来事、ネットなどでの書き込み、TVなどに写しだされる様子を見たり、友達と論じたりしていると、もし、それが事実であるならば、もう少しなんとかならなかったのだろうか?団体の方も違う対応の仕方は無かったのだろうか?と感じる事はあった。

 でも、それは、外野席にいる私の思う事。渦中を、走り回っている人達に、あれもこれもと望むのは酷ではないかと思う。
恐らくは、ネットやTVを見る間も、電話の応対をする時間さえままならないのではないだろうか。外野席にいる人間と現場の人達とでは、状況がちがう。言い換えれば、危機感が違う。
もし、どうしても納得がいかない、本気でなんとかしたいなら、外野席から、あれこれ言うよりは、自分から現場に出向いて、現状を見てくればどうだろう、理不尽と思うなら、相手に会いに行けば良い。
相手に何かを望むより、自分が動くほうが、解決への近道だと思う。

 だとすれば、自分が行動を起こさずに、こう言う際、是非の発言をする事に、なにか意味?意義?はあるのだろうか。
少なくとも、真の愛犬家なら、自分の発言に、憶測などの枝葉がついて、勝手に一人歩きを始め、結果、救われる命が減るような事態に繋がれば、胸を痛めるのではなかろうか。。。
 たとえば、誰かが里親を申し込もうとしていたとする、その人に「知り合いの人の知り合いが(又聞きの又聞き)こんな事があったって」と、告げた結果、話した側が良い方で、愛犬家であれば、相手は鵜呑みにするかもしれない。
或いは、そう言う声が広がって、支援企業が減るような事が起きないとも限らない。
そういう状況が起きた時、しわ寄せを受けるのは、犬達ではないだろうか。
 
どういう意見、不満があるにせよ、広島に駆けつけられた方、このことに強い関心を示される方、論じておいでの方達は、その殆どの方が、犬を愛していらっしゃる、恐らくは、ご自分にもパートナーのいる方、或いはかつていた方で、自分の意思とは関係なく、人間の身勝手で、理不尽な扱いを受けている犬達を大切な命として受け止めて、その子達の幸せを何よりも望んでいる方達だと、思う。

 だとすれば、何はともあれ、レスキューに立ち上がった人達が居なければ、今回数百頭の犬達の命は今に繋がっただろうか。
言うまでも無い事だが、レスキューに駆けつけたボランティアさん、各企業、マスコミ、地域の方達、沢山の全国の見えない力が結集すればこその事とは思う。
それでも、誰かが、走りださない限り、そういう力は集まっては来ない。
 私自身の少ない経験からでも、身にしみて、感じることは、大変な事を前にして、「手伝うよ」と言う人は少なくないけれど、「自分がやろう」と言える人はめったに居ない。
自分を振り返っても、「手伝う」とは即答できても、「私がやる」と言えるまでには随分と悩み、時間を要する。
確かに手伝ってくれる人が居なければ、できないこともあるけれど、「手伝う人」がどんなに沢山集まっても、「自分がやろう」と、誰かが立ち上がらない限り、何も始まらない。

 私も個人的に、何頭か頼まれて、里親探しをした事がある。
一頭の良縁を探そうと、真剣に向き合えば、それだけでも、随分自分が磨り減っていく気がしたものだ。
里親探しを引き受けるとは、その子の命と将来をあずかると言うこと、誰でもいいからと、無責任な事はできない。
 そういう経緯もあって、、広島のレスキューは、私にはとてもできそうにないと、頭が下がるばかり。
それでも、ずるいとは思いつつも、彼らが走り続けてくれれば、何かしらの、後方支援、或いは、今はできなくても、いつかはなにかできる時が来るかも知れない。。。そういう思いが自分の中にあるのは否めない。

 誤解を招かないよう、改めて書くけれど。。。
上に書いた事は、「愛犬家なら、皆で応援しましょう」と、呼びかけているのではない。
それぞれの考えはあって当然、私は団体のスタッフでもなければ、個人的関係も無い。
 
ただ、今、少なくとも、世間でこれだけ騒がれて、今までは、見過ごされ、一般的に知られる事も殆ど無かった問題が、これだけ取り上げられているのは理不尽な扱いを受けてきた犬達にとって、少しでも希望の灯となる出来事ではないかと思う。
その灯を、犬達を思う人達の善意の、ボタンの掛け違いのようなできごとをきっかけに、自分では気づかないうちに、結果的に反対側に立ってしまう事も起きるのではないか。。。
そんな事を考えると、とても残念で悲しい気持ちが胸につかえ、ここ数日、そういう危惧が、頭から離れない。
皆が犬のことを思いながら、誤解が誤解を生むような状況があるとすれば、それも悲しい。

「たかが犬のことで、何を熱くなっているのか」と、思われる人達に何かを語るつもりは無いし、そういう方は恐らく犬関係のHPなど、見ることは無いだろう。
 愛しているから、問題に対して真剣になる、真剣になるから腹が立つ。そこにそれぞれの立場や思い入れが入ってくれば、様々な問題や誤解が生じることもあるかもしれない。
 だとしたら、自分の考えをもつ人達は、自分なりの考えで、何かを、始めればどうだろう。。。
それができ無いのなら、誤解を生じそうな、自分の気持ちや考えはとりあえず、しまっておいて、静観するのも、犬達への愛情に繋がらないだろうか。
勿論、本当になにかしらの問題が起これば、当事者、或いは事実関係をきちんと確認できる方達に、公にして欲しいと思う。
何でもかんでも、犬の為と、黙認しようと言っているのでも無い。

先に書いた、里親さんの近しい方からお聞きした話では、その里親さんは、今回のこと、残念だし、思うところが無いわけではないけれど、今はあの子の幸せを心から願うしかないと、おっしゃっていたそうだ。
広島のドッグレスキューのニュースに心を痛めた、大勢の方の思いは、その里親さんの「犬達の幸せを心から願う」これに尽きるのではないかと私は思っている。
 
 そして、願わくば、仮に今回、何らかの経緯や、状況で、納得のいかない気持ちや、割り切れない思いに傷ついて、「もう、こんな思いは沢山」と、思われる方や、困惑している方が居たとしても、別の場所、別の機会に出会ったら、その時は、また、手を差し伸べて欲しい。。。
こういう出来事で、傷ついたり、胸を痛めるような人達こそが、犬を幸せにしてあげられる人達だと思うからだ。
私も、何度も、嫌な思いも、悲しい思いもし、自分のおせっかいで見過ごせない性格を恨めしく思うこともあるけれど、無条件に犬は愛しい。