★予測★

 彼と生活するようになってから、犬の学習能力に驚かされる。私の生活習慣、家族の行動を見ているうちにその先を予測して行動しているように見える。その他にも自分の過去の経験、出来事を記憶していて、状況に応じて対処しているようにも見えるのだが、かいかぶり過ぎなのかもしれない。
彼の日常の中の出来事を思いつくままにいくつか書き起こしてみた。

 彼が2歳くらいの時だっただろうか、私はお湯を沸かしているのを忘れて吹き零れさせていた。その度に慌てて部屋を走り回るので、彼もその度に付いて走った。そんな事が何度かあって、ある日お湯が吹き零れた瞬間彼は台所に走って吠えた。その時は間に合わなかったのだが、その後、彼は、お湯が沸く1〜2分前になると台所で吠えるようになった。最初、偶然かとも思ったのだが、そうではなかった。お湯を沸かす度、同じ行動が繰り返された。ところが、普段は[待て」の一声で吠えるのを止める彼が、なぜか、火を止めるまでは吠えつづける。最初に知らせてくれた時、私が大喜びして、彼をほめたせいかもしれない。それとも、火を消すまで安心できなかったのか・・・。犬が吠えつづける1〜2分の長く感じられること・・・等々私は彼を叱った。案の定、彼は私の望まない解釈をした。吠えるのを止めて欲しいと思う私の気持ちは伝わらず、彼は知らせてくれる方を止めてしまった。

 彼は物を探す遊びが好きだ。家の中ではそうそう暴れる訳にもいかないので、この遊びを始めたのだが、彼の捜すパターンは決まっていて、まずありそうな所の匂いをかぎまわり、それでも見つけられないときは、今まで(かなり遡って)隠された事のある場所を一つづつ、確認していく。この時の彼は明らかに匂いを嗅ぐと言うのではなく、記憶を辿って見てまわっているように見える。

 その日は階下が留守なのをいい事に、彼と思う存分部屋の中でボールを投げて遊んでいた。たまたまボールがローテーブルの上に落ち、ゆっくりと転がり始めた時、彼は落下地点で待っていた。私は高さ30cm程のテーブルなので当然ボールがテーブルから落ちる前に捕って来ると思っていたのだが・・・。

 彼は私とディスクをする際、必ず、ディスクを見ながら走る。どこに飛んでいくか、投げている私でさえ、不安なのだから、当然だ。ところが夫の時は明らかに違う。ゴーの合図で後ろを振り向きながら走り、彼の手からディスクが離れたのを確認すると真っ直ぐ前を向いて走り出す。
ところが最近彼は、もっと楽な方法を見つけた。飛んで行くディスクを追いかけるのは何度もするとくたびれる、投げての正面の遠い所で飛んでくるのを迎え撃つ方を選んだようだ。(それじゃあディスクにならないんだって・・・あ〜あ)

 ある日、友達が5歳の男の子と、7歳の女の子を連れて我が家に遊びにきた。
何が面白いのか、その男の子と彼は二人並んで、何度も何度も庭を走ってぐるぐるとまわっていた。庭には狭い所もあり、大丈夫かな〜と、少々心配しながら見ていると、彼はそれまで男の子と並んで走っていたが、狭いスペースのところでは少し手前でスピードを落とし、子供に先を譲って、その場所を越えると、また並んで走り始めた。
しばらく見ていたのだが、これも、偶然ではなかった。
子供への配慮と言うよりは、自分自身の危機回避の為なのかもしれない。